「一次予防」を支える歯科医院の管理栄養士!

皆さんは歯科医院で働く管理栄養士を知っていますか?健康な歯を守ることは、認知症予防や生活習慣予防等、様々な病気のリスクを低減してくれることがわかってきています。今回は、日本人の歯を守る、歯科医院の管理栄養士についてまとめてみました。『知らなかった!』と思ったそこのあなた!これを読めば新たな管理栄養士の活躍の場を知ることができますよ。

歯科医院で健康の一次予防

歯医者と言えば「歯科医師」「歯科衛生士」「歯科助手」しかいないイメージではないでしょうか。しかし、ここ数年で状況が変わり、歯科での「一次予防」の重要性が認識されるようになり、管理栄養士を歯科医院に置くことが注目され始めるようになりました。

予防とは

予防とは予防医学の用語であり、介入する対象と時期によって分類したものを指します。難しく聞こえますが、簡単に言ってしまうと、病気になる前の健康な人に対し、病気の原因と思われるものの除去に努め、健康増進を図って病気の発生を防ぐなどの予防措置を取ることを一次予防と言います。ちなみに二次予防は、病気に罹った人を早期発見・治療を行い、病気の進行を抑えること、更に重篤にならないように努めること指します。三次予防は、病気が進行した後の後遺症治療、再発防止機能回復や維持、社会復帰の対策を立てることを言います。

歯科医院の栄養士の仕事

歯科医院の管理栄養士の仕事内容は歯科助手が主な仕事になります。管理栄養士枠の採用であっても、勤務のほとんどの時間が栄養指導に当たれるというわけではありません。患者が虫歯や歯周病などを患っている場合、栄養指導で改善が見込まれる場合にのみ栄養指導を行っている医院が多いようです。患者も「無料なら聞いてみてもいいか」くらいの軽い気持ちで指導を受けているようです。他の業界でも、例えば薬局であれば陳列・販売等も管理栄養士が行い、用途に合わせて栄養指導を行っているので、似たようなポジションになります。今はあまり普及していない管理栄養士のポジションであるため、毎日の業務に必ずこの仕事が入るといった大きな決まりはないようです。一例を挙げてみると、受付業務・治療台への案内・治療アシスタント(照明移動、口腔洗浄等)・治療計画の説明、そして栄養指導です。割合としては歯科助手業務が多いことがわかりますね。

歯科医院での栄養士の認知度

現状では栄養・食事指導を受ける患者は、歯の治療の「ついで」という認識していることが多く、栄養・食事指導が歯の治療に影響があると認識している人はとても少ないようです。しかし、前述したように、医学的なデータで食事は歯の健康に大きく影響を与えることがわかっています。歯の治療と食事改善を合わせると、歯の治療を効果的かつ迅速に行える場合が多いのです。栄養・食事指導の中には、子どもの栄養・食事指導や歯周病の治療を目的とした指導があります。実際どのような指導が行われているのでしょうか。

子どものむし歯治療

歯医者に通う子どものほとんどは「むし歯治療」を目的にしています。「むし歯」とは口内の細菌が出す酸によって溶けた状態のことを指します。進行すると痛みが出るだけでなく、歯の内部の神経にまで影響が及ぶと、耐え難い痛みの原因になったり、全身に細菌が回ってしまうこともあります。むし歯や歯周病になると歯だけにとどまらず、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞のリスクが高まることが知られています。
(日本歯科医師会HP参照:http://www.jda.or.jp/park/trouble/index02.html#1)

むし歯の栄養指導

むし歯の治療をしている子どもたちへ行っている栄養指導をまとめてみました。
①よく噛む
口の中の唾液は、汚れを洗い流すのに効果的であることが分かっています。唾液をよく出すために、一口「20~30回噛む」ことが推奨されます。柔らかいものだけでなく、噛みごたえのあるものを食事に取り入れてしっかりと噛む習慣をつけるよう指導します。

②おやつの選び方
間食は、子供に必要なエネルギーや栄養素を補給するために非常に重要です。しかし、長時間だらだらと食べたり、甘いものばかりを選んでしまうとむし歯になるリスクが高まります。時間と量をあらかじめ決め、だらだら食べを防ぎます。キシリトールやフッ素が入ったガムやキャンディは、むし歯予防に効果的です。このようなものを補助的に使うよう指導します。

歯周病予防のための栄養指導


歯周病とは、歯を支える歯ぐき(歯肉)や骨(歯槽骨)が壊されていく病気です。歯周病はこれらの組織が壊され、最後には歯が抜け落ちてしまいます。現在日本人の8割がこの病気に罹っています。日々の生活習慣がこの病気になる危険性を高めることから、生活習慣病の一つに数えられています。日々の生活習慣が原因となる歯周病。では、どのような栄養指導が行われているのでしょうか。

禁煙指導

喫煙習慣のある方の中に高齢者が多くいますが、喫煙が歯周病に影響を及ぼすと知っている人はあまりいません。食生活とは少し異なりますが、喫煙習慣は歯周病を重篤化させます。食習慣と共に禁煙を行うよう指導を行います。

よく噛むこと

前述しましたが、噛むことは唾液分泌を促進します。食べ物と唾液をよく攪拌することで、歯の汚れをつきにくくしたり、消化を良くする効果も期待できます。最低20分は食事時間を設け、早食いにならないよう指導を行います。

栄養バランスの整った食事

繊維質の多い食品や、ビタミン・ミネラルの豊富な食品をしっかり取り入れ、食事バランスを整えます。歯周病になると、糖尿病や脂質異常症など様々な生活習慣病に罹るリスクを増加させてしまいます。主食・主菜・副菜のそろった食事を心がけ、バランスを整えるよう指導します。

歯科医院で働くメリット


歯科医院で管理栄養士が働くことのメリットは、病院というカテゴリでありながら、勤務の時間帯に大きな幅がないというところです。病院勤務の場合は、多くのところでシフト勤務が求められますが、歯科医院の場合は、早朝から深夜までということがありません。また、給食調理などと違って時間に追われるということもあまりありません。管理栄養士資格を持ち、歯科助手で働くことによって他業種の経験を積むことができます。
難点を挙げるとするならば、歯科助手の業務がメインとなるため、管理栄養士の本領発揮ができる、栄養指導の機会が他業界よりも少ないということです。しかし「一次予防」は今後さらに注目されると考えられます。病気にならない食事を提案することのできる職場はとても魅力的ですね。

これから普及する歯科医院の栄養士

歯科はもともと咀嚼障害の改善を目標として展開されてきました。今は、高齢化社会の到来により、咀嚼障害以外にも摂食機能全体の向上改善、栄養状態の改善が求められる時代になります。実際に咀嚼障害により摂取エネルギーやたんぱく質だけでなく、各種の栄養素の摂取が低下していることが多く報告されています。歯科医院は今後、歯のみならず栄養・食事指導を含めた改革が必要になってくるといえます。まだ多く展開されていない歯科医院の管理栄養士ですが、今後の活躍が予想されます。この機会に歯科医院の管理栄養士を調べてみることをオススメします。

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栄養士くらぶ編集部

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