日本腎臓病学会によると、日本人の成人人口の8人に1人が慢性腎臓病であると言います。生活習慣病のひとつである腎臓病は放置しておくと透析をしなくてはならなくなる危篤な病気です。特に腎臓病は自覚症状が出にくく健康診断を怠ると気づいたときには進行していたといったケースも珍しくありません。慢性腎臓病から慢性腎不全に陥った場合、通常の生存期間は数か月程度です。透析治療を受ければ猶予を引き延ばせますが、長くても5年から10年以内に死亡に至るケースもあります。そこで今回は腎臓病の食事療法について3つご紹介いたします。
目次
腎臓の働き
腎臓には大きく5つ、私たちの身体の機能を正常に保つための重要な働きがあります。腎臓の働きについて簡単にみていきましょう。
血液の生成
腎臓は血液を生成する重要な機関です。腎臓はホルモンを出し骨髄の細胞に刺激を与えます。すると赤血球がつくられるのです。なので腎機能が低下するとホルモンの分泌が減少し、赤血球の生成量が減少したりつくられなくなるので貧血などの症状が現れます。
老廃物の排泄
腎臓は血液をろ過して必要なものを再吸収し、不要な老廃物を尿として体外へ排泄する役割があります。このろ過する部分をネフロンというのですが、腎機能が弱まるとろ過する網目が荒くなり、必要な栄養まで排泄してしまいます。そのため、ろ過機能が弱まると尿にタンパクが混じり、検尿にて腎機能が低下していることが発見されることがあります。
血圧の調整
血液のろ過のほか、腎臓は血圧の調節も行っています。腎臓のろ過機能によって水分と塩分の調節を行うことで血圧が高いときには塩分と水分の派出を促進し、血圧が低いときには塩分と水分の排出を抑制します。腎臓と血圧は密接な関係にあり、血圧によって腎臓に負担をかけると腎臓の機能低下につながります。
体液・イオンバランスの調節
腎臓は体液量やイオンバランスの調節を行っています。腎機能が低下してしまうとむくみや、疲れといった身体に不調がでてきます。
カルシウム吸収の手助け
腎臓は活性化ビタミンDの生成を行い、体内にカルシウムを吸収する手助けを行っています。腎機能低下によって活性化ビタミンDの生成量が減ってしまうとカルシウムの吸収率も悪くなり、骨がもろくなってしまう危険性があります。
腎臓病
上記のように腎臓には重要な役割があり、もちろんほかの臓器で変わりはできないので腎機能が低下したり機能しなくなっては大変です。それでは腎臓病とはどのようなものかみてきましょう。
腎臓病は大きく4つに分けることができます。
腎炎
まずは腎炎です。腎炎は急性腎炎と慢性腎炎があり、ろ過機能を担っている糸球体が炎症を起こしている状態です。急性腎炎を発症後、1年以上にわたって尿検査にて血尿やたんぱく尿といった異常が続いているものを慢性腎炎といいます。
ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群は特定の疾患を指すのではなく、検査にて高値のたんぱく尿、低たんぱく血症、高脂血症、浮腫といった症状のある事を言います。
糖尿病性腎症
糖尿病の発症後、5~10年後に発症するのが糖尿病性腎症です。糖尿病の影響により徐々に腎機能が低下していき、いずれは腎不全へと進行してしまいます。
腎不全
腎不全には急性と慢性があります。急性は何らかの原因によって腎機能が低下し、腎の老廃物の排泄機能が低下することによって不要な尿素窒素やクレアチニンが血液に再吸収されて体内のバランスが崩れてしまいます。急性腎不全の場合には回復することができますが、慢性腎不全にまで進行してしまうと回復することができず、人工透析に頼らなくてはならなくなります。
食事療法のコントロール1
タンパク質コントロール
腎臓病の食事療法の1つめはタンパク質のコントロールです。
腎臓はタンパク質の分解によってできた老廃物の排泄に大きく関わっているため、腎機能に負担をかけないよう腎機能の低下の程度や腎不全の段階によってタンパク質の摂取量を調節する必要があります。
食事療法のコントロール2
塩分コントロール
2つめは塩分です。先ほど説明した通り血圧の調節を塩分と水分でコントロールしています。
腎機能が低下してしまうと塩分の調節がうまくできなくなってしまい血圧の上昇やむくみといった症状がでてきます。
そこで塩分も段階に合わせて調節していかなくてはなりません。
食事療法のコントロール3
エネルギー量を補う
3つめは1つめで摂取制限されたタンパク質のエネルギー量を補うということです。
タンパク質の摂取量が減ってしまうと、足りない分のエネルギーを体内から補給しようとします。
そこで十分なエネルギーを摂取するために炭水化物と脂質の量を調節し、十分なエネルギーが摂取できるよう考慮しなくてはなりません。
日常生活にも気を付けましょう
腎臓病の治療には食事以外にも安静にすること、身体を冷やさないこと、服薬といった日常的に気を付けなくてはならないことがありますので、十分注意しましょう。今回は腎臓病の方に向けた食事療法3つのコントロールについてご紹介しました。腎臓病の治療について少しでもお役にたてれば幸いです。
栄養士くらぶ編集部
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