医師や看護師などの医療従事者の仕事と、管理栄養士の仕事で大きく異なるのは「病気になってから治療する」のか「病気になる前に予防する」のかではないでしょうか?
昨今のテレビやメディアでも「セルフメディケーション」や「予防医学」などの言葉が多く聞かれるようになりました。
病気になる前に予防する!そんな考え方から特定健診・保健指導が行われています。
特定健診・保健指導に興味のある管理栄養士の方に向けて記事をまとめてみました。
是非参考にしてみて下さいね!
目次
そもそも特定健診とは?
特定健診とは、平成20年から始まった「日本人の死亡原因の約6割を占める生活習慣病の予防のための健診」で、40~74歳までの方を対象にした健診になります。
メタボリックシンドロームは健康状態を確認し、バランスのとれた食生活と適度な運動習慣を身に付けることにより予防可能です。
メタボリックシンドロームとは?
特定健診で着目されるメタボリックシンドロームとは一体どういう状態を指すのでしょうか?
メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさり、心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患を招きやすい状態を指す症候群です。
診断基準は以下のとおりです。
ウエスト周囲径に加え、①~③の項目のうち2項目以上があてはまるとメタボリックシンドロームと診断されます。
管理栄養士はメタボリックシンドロームと診断された方に対して、生活指導及び食事指導を行います。病気に罹るリスクを少しでも減らし、健康を取り戻すチャンスを与える仕事です。
特定保健指導とは?
特定保健指導とは、対象者が健診結果から自らの健康状態を正しく理解し、生活習慣改善のための行動目標を自ら設定・実施できるよう、医師、保健師、管理栄養士による個人の特性やリスクに応じた支援の事を言います。
主にメタボリックシンドロームまたは予備軍に該当している人が対象となります。
健診結果及び追加リスクによって、「動機付け支援」「積極的支援」の2通りの支援があります。
動機付け支援とは?
動機付け支援とは、個別面接またはグループ面接を原則1回行い、対象者が自らの生活習慣を振り返る行動目標を立て行動に移し、その生活が継続できることを目指した支援のことを指します。
初回面接の6か月後に通信等(メール、電話、ファックス等)を利用して評価を行います。
検査結果が下記に該当する場合、動機付け支援の対象となります。
積極的支援とは?
積極的支援とは、動機付け支援に加え、3ヵ月以上の定期的・継続的な支援(メール、電話、ファックス等)を行い、対象者が自らの生活習慣を振り返り、行動目標を立てその生活が継続できることを目指した支援を指します。
3ヵ月後に通信等(メール、電話、ファックス等)を利用して評価を行います。
検査結果が下記に該当する場合、積極的支援の対象となります。
番外編 タバコとメタボの関連リスクとは?
「百害あって一利なし」と言われているタバコ。2020年の東京オリンピックを見据えて、外食業界でも禁煙対策がされていますね。
このタバコはメタボリックシンドロームともとても深い関係にあります。
それは「タバコを吸うとメタボリックシンドロームになりやすい」という点です。
喫煙をすると、アドレナリンなどのホルモンを介して血糖値上昇を引き起こし、体内で唯一血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌を低下させ、血糖をあげてしまいます。さらに、すい臓の細胞を傷害して糖尿病発症の危険を加速させてしまうのです。
脂肪を分解する酵素を低下させ脂質異常症にも関係し、喫煙することで血圧の上昇も招きます。
健康を考える際はまず禁煙から始めましょう!
以前の保健指導と特定保健指導の違い
これまでの健診・保健指導は「病気の早期発見・早期治療」を目的としており、病院で治療を受ける際や定期健診、個別健康相談など様々なところで行われていました。
一方平成20年から始まった特定保健指導では「病気予防」を目的として行われています。
これが以前の保健指導との大きな違いです。
前述したように、日本人の6割は生活習慣病が原因で死亡しています。
生活習慣病は日々の生活習慣の改善が最も効果のある予防法です。
このことから、生活習慣病に罹るリスクが高い人を洗い出し、生活習慣の改善を支援することが行われています。
管理栄養士に求められるスキル
コミュニケーション能力
生活習慣病は、日々積み重ねてきた生活習慣が原因です。
日々何気なく続けている行動が病気を引き起こしてしまうのです。
知識のある専門家が話をしただけでは簡単に人の生活習慣は変わりません。
特に食生活を変えるのはとても難しいです。好きなもの、食べていたものが食べられないというのは苦しいですよね。
管理栄養士は、その人が日々どのような食生活をしているのか正確に把握することが大切です。
そのために、対象者との信頼関係を築き、心を開いて話をしてもらうことが重要となります。
正確に食生活を知った後、メタボリックシンドローム改善のための食事アドバイスを行います。
近年、会社の研修にも取り入れられている「コーチング」という方法が、カウンセリングの際に役立ちます。一度このジャンルの本を読んでみることもおすすめします。
的確な指示を出すための状況把握能力
食生活改善には、対象者の行動を変化させることが必要です。
教科書に載っているような情報をそのまま伝えても効果が薄い場合があります。
その人の性格や、思考、生活環境等を総合して判断し、実施の可能性が高いアドバイスを伝える必要があります。特定保健指導では何度も面接ができるわけではありません。
限られた時間の中で、その人の状況を正確に把握し、適切な方法をアドバイスすることは管理栄養士に求められる重要なスキルです。
疾病の知識
食生活と生活習慣病の関係は日々研究が進められています。管理栄養士はこういった新しい情報もしっかりと把握し、カウンセリングに取り入れる必要があります。
どのような症状が現れるのか、原因は何なのか、改善には何が必要なのか等、疾病に関する知識を持ち、効果的なアドバイスをしていく事が重要です。
栄養指導が未経験で心配…
経験がなく不安に思っている管理栄養士の方も多いようです。経験のある方の方が仕事に就いた時に有利な部分もあります。
しかし今、特定健診・保健指導では管理栄養士の方を必要としています。
未経験でも、長い時間仕事ができない主婦や子育て中も方でも、バックアップ体制を整えた企業が管理栄養士を募集しているのです。
マニュアル・研修がしっかりしていて、未経験でも安心して働ける体制を整えた企業があります。
また、在宅でできたり自分の好きな時間を選んで仕事ができたりと働き方も様々です。
これを機会に特定保健指導のお仕事にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
まとめ
21世紀における国民健康づくり運動である「健康日本21」では、メタボリックシンドロームに該当する、もしくは予備軍を平成20年度に比べて25%減少させるという目標を掲げています。
しかし、いまだに達成できていません。数値は横ばいのままです。人の生活習慣を変える指導がいかに難しいかを表している結果です。
専門的な知識があっても行動に移すのは難しいですよね。対象者の気持ちや考えに寄り添った指導が求められます。
国民が一人でも病気にならない生活を手に入れるために、管理栄養士の活躍が期待されています。興味のある方はぜひ特定保健指導のお仕事もチェックしてみて下さい。
栄養士くらぶ編集部
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